同時通訳の機材一式と費用、スマホで代替する方法
同時通訳には、通訳ブース・送信機・受信機・ミキサー・音響オペレーターなど一式の機材が必要です。公開されているレンタル料金を見ると、受信機は1台あたり数百円からですが、ブースや送信機、設営費まで含めると1日あたり数万〜数十万円規模になります。
数十人規模の対面イベントでは、参加者のスマホをそのまま受信機にする「BYOD方式」を使えば、受信機の手配や回収の手間を省ける場合があります。以下で機材の内訳と費用感、BYOD方式との違いを整理します。
同時通訳に必要な機材一式
同時通訳は、通訳者が話者の声を聞きながら別の言語に訳し、その音声を参加者が受信機で聞く仕組みです。この仕組みを成立させるために、次のような機材が必要になります。
- 通訳ブース: 通訳者が話者の声に集中できるよう遮音した個室。据え置き型や簡易パーテーション型があります。
- 送信機・システムコントローラー: 通訳者の音声を無線や赤外線で受信機に送る機材です。
- 通訳者ユニット: 通訳者が使うヘッドセットとマイクの一式です。
- 受信機・イヤホン: 参加者に配布し、回収まで管理します。
- ミキサー: 会場の音響と通訳音声を調整する機材です。
- 音響オペレーター: 設営から本番中の音量調整、撤去までを担当する人員です。
これらは通訳者の技術料とは別枠の費用で、音響・映像を扱うレンタル業者から手配するのが一般的です。
機材レンタルの費用相場はいくらか
2026年7月時点で公開されている2社のレンタル料金表を見ると、品目ごとの1日あたりの目安は次のとおりです。
| 品目 | 1日あたりの目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 通訳ブース | ¥25,000〜33,000 | 遮音仕様・簡易パーテーションは別料金[1][2] |
| 送信機/システムコントローラー | ¥20,000〜33,000 | 受信機への音声配信を担う[1][2] |
| 通訳者ユニット | ¥15,000〜33,000 | ヘッドセット+マイク[1][2] |
| 受信機(1台あたり) | ¥800〜1,100 | イヤホン込み。参加人数分が必要[1][2] |
| ミキサー | ¥25,000〜27,500 | 会場音響との調整用[1] |
| 音響オペレーター | ¥35,000〜38,500/名 | 設営〜本番〜撤去まで担当[1] |
| 設営・撤去費 | ¥40,000〜66,000/式 | 前日設営はさらに高くなる傾向[1] |
出典: NOVA通訳翻訳サービス公開料金表[1]、ヒビノメディアテクニカル公開料金表[2]。金額は税込・2026年7月時点の目安で、会場や業者により変動します。
総額のイメージ: 参加者30人規模のイベントで、通訳ブース・送信機・通訳者ユニット・受信機30台・ミキサー・音響オペレーター・設営費をひととおりそろえると、公開料金の合計だけで1日あたりおよそ18万〜26万円になります。ここに交通費や、遠方であれば宿泊費が加わります。
受信機を配る運用の負担
費用だけでなく、運用面の負担も見落とせません。受信機は参加者数分を用意し、入場時に配布して退場時に回収する必要があります。台数が合わないと紛失扱いになり、業者によっては受信機やイヤホンの紛失が弁済の対象になる場合もあります[2]。数十人規模のイベントでも、この配布・回収の運用は主催者やスタッフの手間として残ります。
参加者のスマホを受信機にする「BYOD方式」
近年は、専用の受信機を配らず、参加者自身のスマートフォンを受信機代わりに使う方式が広がっています。参加者はQRコードを読み取るなどしてブラウザにアクセスし、翻訳された音声や字幕をそのまま自分のスマホで受け取ります。会場側が用意するのは、話者の音声を配信する仕組みだけです。
この方式では、受信機の購入・レンタル、配布、回収、紛失対応といった作業がなくなります。一方で、参加者が個人のスマホと自分のイヤホンを使うため、会場のWi-Fiやモバイル回線の状況に影響を受けやすい点は考慮が必要です。BYOD方式の仕組みや注意点は、関連記事で詳しく解説しています。
| 項目 | 機材レンタル方式 | BYOD(スマホ受信)方式 |
|---|---|---|
| 参加者への配布物 | 受信機+イヤホン(要回収) | なし(自分のスマホで視聴) |
| 費用感 | 機材一式で数万〜数十万円規模 | 機材レンタル費はかからない |
| 設営 | ブース設置・配線・音響チェックが必要 | QRコードの表示など準備が軽い |
| 依存する環境 | 会場のPA設備や赤外線・無線電波 | 会場Wi-Fiやモバイル回線 |
| 向いている規模 | 数百人規模の国際会議 | 数十人規模の対面イベント |
小規模イベントならVoxFlightという選択肢
VoxFlightは、小規模な対面イベント向けのライブ翻訳サービスです。主催者はiPhoneとインターネット接続だけでセッションを開始し、会場にQRコードを表示します。参加者はスマホのブラウザでQRコードを読み取り、翻訳字幕を見ながら翻訳音声を聞けます。専用の送信機や受信機を用意する必要はありません。
音声はiPhone内蔵マイクか、iPhoneに接続した外部マイクで拾います。VoxFlight管理DB/ストレージには元の音声・翻訳音声を永続保存しません。外部AI事業者の処理・保持条件はプライバシーポリシーで開示します。料金は正式提供前の予定価格として公開されています。有料購入の提供開始後、セッションパスの購入完了時にApp Storeで決済されます。購入済みパスは翻訳開始時に消費されます。料金表では1言語パスと2言語パスを比較しています。
| プラン | 1言語 | 2言語 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 15分・50人 | ¥980 | ¥1,780 | 最大50人 |
| 60分・50人 | ¥3,980 | ¥6,980 | 最大50人 |
| 60分・100人 | ¥5,980 | ¥9,980 | 最大100人 |
翻訳先が2言語の場合は、同じ時間・参加上限の完全な2言語パスをApp Storeで1回購入します。1言語パス購入後の追加課金ではなく、購入前に合計金額が表示されます。
VoxFlightは現在、正式提供に向けて準備中です。上記は正式提供時の予定価格です。
ただし、向いていない場面もあります。医療や法律のように誤りが許されない通訳、専任チームを組む大規模カンファレンス、複数人が同時に話し合うパネル討論には向きません。こうした場面では、機材の規模にかかわらず人間の同時通訳を選ぶのが適切です。数十人規模のミートアップやセミナーで、機材の手配と費用を理由に多言語対応を諦めていた主催者にとっては、検討する価値がある選択肢です。
出典
- NOVA通訳翻訳サービス「通訳機材|料金表」 https://www.nova.co.jp/biz/tsuhon/equipment/price.html(2026年7月時点の公開料金を参照)
- ヒビノメディアテクニカル「赤外線同時通訳システム」 https://www.media-t.co.jp/rental/sound/interpreter/33303902.php(2026年7月時点の公開料金を参照)
よくある質問
同時通訳の機材一式は自分で揃えられますか。
通訳ブースや送信機、ミキサーは専門機材のため、多くの主催者は音響業者からレンタルします。台数や日数を伝えて見積もりを取るのが一般的です。少人数の対面イベントなら、参加者のスマホを受信機にするBYOD方式で機材レンタル自体を省く選択肢もあります。
受信機は参加者の人数分そろえる必要がありますか。
翻訳を聞く参加者の人数分が基本で、紛失や電池切れに備えて数台の予備を加えるのが一般的です。人数が変動しやすいイベントでは、必要台数の見積もりが難しい点も負担になります。
BYOD方式でも通訳の質は変わりますか。
BYODは音声や字幕をどう配信するかという方式の話で、話す人が人間の通訳者かAI翻訳かとは別の論点です。VoxFlightのようなサービスはAIによる翻訳をスマホのブラウザで配信するため、機材面と翻訳方式の両方が従来の同時通訳と異なります。
数十人規模のイベントでも通訳ブースは必要ですか。
数百人規模の国際会議では遮音ブースが標準ですが、数十人規模の勉強会やミートアップでは簡易システムやBYOD方式で対応する主催者も増えています。誤訳が許されない場面では、人数規模にかかわらず専門の通訳体制を検討してください。